アクティベーションの使用: `Activatable` を拡張しない

このチュートリアルでは、起動可能なリモートオブジェクトを実装する方法について説明しますが、リモートオブジェクトの実装で java.rmi.activation.Activatable クラスを拡張しないという点で、「アクティベーションの使用: Activatable を拡張する」チュートリアルとは異なります。この実装では、Activatable クラスの static メソッドを使って、起動可能なリモートオブジェクトをエクスポートします。このチュートリアルでは、Setup プログラム (「アクティベーションの使用: Setup プログラム」チュートリアルを参照) を使用します。このプログラムは、起動可能なリモートオブジェクトに関する情報を Java^TM Remote Method Invocation (Java RMI) 起動システムデーモン (rmid) に登録し、rmiregistry でそのリモートオブジェクトのスタブをバインドして、クライアントが検索できるようにします。このチュートリアルの前に、前述のチュートリアルを読むことをお勧めします。

このチュートリアルでは、次の手順を実行します。

起動可能なリモートオブジェクトの実装
クライアントの実装
ソースファイルをコンパイルする
Setup プログラムの実行
クライアントを実行する

このチュートリアルの実行に必要なファイルは、次のとおりです。

MyRemoteInterface.java - 単純なリモートインタフェース
DoesNotExtendActivatable.java - リモートインタフェースの「起動可能な」実装
Client.java - リモートインタフェースを使用するクライアント
client.policy - クライアントのセキュリティポリシーファイル

起動可能なリモートオブジェクトの実装

起動可能なリモートオブジェクトを実装するには、いくつかの基本的な方法があります。このチュートリアルでは、java.rmi.activation.Activatable クラスの static メソッドを使用して起動可能なリモートオブジェクトをエクスポートすることで起動可能なリモートオブジェクトを実装する方法について説明します。

リモートオブジェクトは、クライアントが起動可能なリモートオブジェクトのスタブでリモートメソッドを呼び出すときに起動されます。起動可能なリモートオブジェクトのスタブには、リモートオブジェクトの起動識別子と、そのリモートオブジェクトの Java RMI 起動システムデーモン (rmid) にコンタクトする方法に関する情報が含まれます。スタブは、リモートオブジェクトの最新のアドレス (つまり、ホスト/ポート) に接続できない場合、リモートオブジェクトのアクティベータ (rmid) にコンタクトしてそのオブジェクトを起動します。rmid は、起動要求を受け取ると、リモートオブジェクトの起動グループがまだ実行されていない場合は、そのグループ (またはコンテナ) の VM を起動します。次に、rmid は、グループにそのリモートオブジェクトのインスタンスを作成するように要求します。グループは、リモートオブジェクトを構築すると、そのリモートオブジェクトのスタブを rmid に返します。次に、rmid は実際のスタブを起動スタブに返して、起動スタブが将来そのリモートオブジェクトにコンタクトする方法についての情報を更新できるようにします。

このアクティベーションを行う前に、アプリケーションでは、使用する必要のある起動可能なリモートオブジェクトに関する情報を登録する必要があります。次の別個のチュートリアルでは、リモートオブジェクトの起動に必要な情報と、その情報を rmid に登録する方法について説明します。

アクティベーションの使用: Setup プログラム

この例では、起動可能なリモートオブジェクトが次の examples.activation.MyRemoteInterface リモートインタフェースを実装します。
package examples.activation;

import java.rmi.*;

public interface MyRemoteInterface extends Remote {
Object remoteMethod(Object obj) throws RemoteException;
}
起動可能なリモートオブジェクトの examples.activation.DoesNotExtendActivatable 実装クラスは次のとおりです。
package examples.activation;

import java.rmi.*;
import java.rmi.activation.*;

public class DoesNotExtendActivatable implements MyRemoteInterface {

private final ActivationID id;
    
public MyPersistentClass(ActivationID id, MarshalledObject data)
throws RemoteException
    {
this.id = id;
Activatable.exportObject(this, id, 0);
    }

public Object remoteMethod(Object obj) {
return obj;
    }
}
DoesNotExtendActivatable クラスは、MyRemoteInterface リモートインタフェースを実装しますが、どのクラスも拡張しません。

DoesNotExtendActivatable クラスは、起動グループが起動プロセス中にインスタンスを構築するために呼び出す特別な起動コンストラクタを宣言します。この特別なコンストラクタは、次の 2 つのパラメータを取ります。

1 つ目のパラメータは ActivationID で、起動可能なリモートオブジェクトの識別子です。アプリケーションが起動記述子を rmid に登録すると、rmid はそれに起動識別子を割り当て、この起動識別子が記述子に関連する情報を参照します。リモートオブジェクトが起動されると、この同じ起動識別子 (リモートオブジェクトのスタブにも含まれている) がコンストラクタに渡されます。

2 つ目のパラメータは MarshalledObject で、rmid にあらかじめ登録された初期化データが含まれています。この初期化データには、たとえば、オブジェクトの持続状態が書かれたファイル名などがあります。この例では、リモートオブジェクトを構築する初期化データは必要ありません。

コンストラクタは、private フィールドに起動識別子を保存してから static メソッド Activatable.exportObject を呼び出し、実装自体 (この) 、起動識別子、およびポート番号 0 を渡して、オブジェクトを匿名の TCP ポートでエクスポートする必要があることを示します。この実装では、保存している起動識別子を実際に使うことはありませんが、この例では、起動可能なオブジェクトの通常の実装での操作を示すために、起動識別子を保存しています。このような実装では、たとえばオブジェクトを終了するために、将来起動識別子が必要になることがあります。

最後に、クラスは、リモートインタフェースの単一メソッドである remoteMethod を実装して、引数として渡されたオブジェクトを返します。

クライアントの実装

Client プログラムは、オプションの第 1 引数として提供されたホストのレジストリ内のリモートオブジェクトのスタブ (リモートインタフェース MyRemoteInterface を実装するスタブ) を検索して、そのスタブの remoteMethod メソッドを呼び出します。クライアントプログラムは、「アクティベーションの使用: Activatable を拡張する」チュートリアルで説明されているものと同じです。詳細は、そのチュートリアルの以下のセクションを参照してください。

クライアントの実装

ソースファイルをコンパイルする

この例のソースファイルは、次のようにしてコンパイルできます。
javac -d implDir MyRemoteInterface.java DoesNotExtendActivatable.java 
javac -d clientDir MyRemoteInterface.java Client.java
implDir は実装のクラスファイルを配置する生成先ディレクトリで、clientDir はクライアントのクラスファイルを配置する生成先ディレクトリです。

`Setup` プログラムの実行

実装段階が完了したら、起動可能なオブジェクトに関する情報を登録して、クライアントが使えるようにする必要があります。Setup プログラムは、「アクティベーションの使用: Setup プログラム」チュートリアルで説明されているように、起動可能なオブジェクトの起動記述子を rmid に登録し、rmiregistry でリモートオブジェクトのスタブをバインドして、クライアントが検索できるようにします。

この例の Setup プログラムを実行するには、Setup プログラムのチュートリアルの「rmid、rmiregistry、および Setup プログラムの起動」を参照してください。rmid、rmiregistry、および Setup プログラム自体の起動方法について説明しています。

Setup チュートリアルの手順に従って rmid と rmiregistry を実行したら、Setup プログラムを実行して、examples.activation.DoesNotExtendActivatable クラスを実装する起動可能なオブジェクトの起動記述子を登録する必要があります。次のコマンド行では、Setup プログラムを実行して、使用される各コードベースの適切なファイル URL を提供します。
java -cp setupDir:implDir                       \
-Djava.security.policy=setup.policy                      \
-Djava.rmi.server.codebase=file:/implDir/                \
-Dexamples.activation.setup.codebase=file:/setupDir/     \
-Dexamples.activation.impl.codebase=file:/impDir/        \
-Dexamples.activation.name=examples.activation.MyRemoteInterface       \
-Dexamples.activation.policy=group.policy                \
examples.activation.Setup examples.activation.DoesNotExtendActivatable
説明

setupDir は、Setup プログラムのクラスのルートディレクトリ

implDir は、実装のクラスのルートディレクトリ

setup.policy は、Setup プログラムのセキュリティポリシーファイル

group.policy は、起動グループのセキュリティポリシーファイル

examples.activation.file システムプロパティは、DoesNotExtendActivatable 実装クラスでは使用しないため、指定する必要はありません。前述の各ファイル URL には、必須の末尾のスラッシュがあることに注意してください。このチュートリアルに適したグループとセットアップポリシーファイルの例は、セットアップのチュートリアルに示されていますが、以下にも示しておきます。

setup.policy

group.policy

Setup プログラムからの出力は、次のようになります。
Activation group descriptor registered.
Activation descriptor registered.
Stub bound in registry.

クライアントを実行する

正常に DoesNotExtendActivatable 実装の起動記述子を登録したら、クライアントプログラムを実行できるようになります。クライアントプログラムは、最初の実行時に起動可能なオブジェクトを起動します。

クライアントプログラムは、「アクティベーションの使用: Activatable を拡張する」チュートリアルで説明されているものと同じです。詳細は、そのチュートリアルの以下のセクションを参照してください。

クライアントを実行する