ジブリ作品は主旨が単純且つ明快過ぎていて、その割にはメッセージ性が弱く薄っぺらい作品が多く、当方はあまり好みではなかった。
その中でも何も考えずに敢えて観るならば『魔女の宅急便』や『耳をすませば』が観れる程度であり、唯一認められるものは『もののけ姫』だけであった。
2013年公開の『風立ちぬ』も何が主旨なのかはっきりせず、メディアで話題になるほどの作品とは思えなかった。(航空工学に携わる技術者を題材にしたまでは良かったが…)
評価が低迷しているさなかに公開されたジブリ作品の最新作は、イギリスの児童文学作家ジョーン・ゲイル・ロビンソン作『When Marnie Was There(邦題:思い出のマーニー)』が長編アニメーション化され、2014年夏に公開された。
現時点での最新作である『思い出のマーニー』は日本でのアニメ化により舞台をイギリスから日本へ移し、北海道を舞台にジブリ作品の優しい画と緑溢れる自然がマッチし、劇中歌の楽曲も画に溶け込む柔らかさがあり、ストーリーと画と曲が見事にマッチした作品と感じた。
この作品はジブリ作品として子供には理解されにくいだろうが、敢えてこの映画を自分らの子供達に観せ、心(頭)の片隅に残してあげることで、大人になって改めてこの作品を見直し理解した時、親や子に対しての愛情が大きく変化する作品だと思う。
『第38回日本アカデミー賞 優秀アニメーション作品賞』を受賞。受賞はこのひとつにとどまったが、ジブリ作品の中で間違いなく現時点の最高傑作だと思う。
主人公の杏奈が喘息の静養と心の傷を癒す為に北海道の片田舎にある親戚の佐々木家にひとりで訪れる。そこで対岸にある西洋風の屋敷を見付け、杏奈はその屋敷に見覚えがあることに気付く。
ある日、廃屋であった屋敷に一人の少女が居ることに気付き、杏奈はボートを漕いで屋敷に向かう。そのボートは杏奈に会う為に少女が用意したものだった。その少女は屋敷の娘であり、少女はマーニーと名乗った。
杏奈はマーニーと過ごすことで次第にマーニーに惹かれ始め、少しずつ閉ざしていた心を開き始める。お互いの秘密を打ち明けて行くことで二人は分かち合い始め、良き友人として認め合うようになる。
ある日マーニーの過去の傷を癒す為にふたりは丘の上にあるサイロに向かうが、嵐の中、サイロでマーニーに取り残された杏奈は、また人を恨み始め誰をも信じられなくなりかけた時、夢の中でマーニーと再会する。
夢の中でマーニーには残された時間が無いことや杏奈への想いを知った時、杏奈はマーニーを許し和解を交わす。そしてお互いの心が結ばれた時、誰よりも深い愛情を感じられるようになると同時にマーニーの幼馴染みであった久子からマーニーの詳細を知る。そして杏奈を迎えに来た養母頼子から一枚の写真を渡され、お互いの関係を知ることとなる。
杏奈が人を恨むことから孤独を味わい感情を無くすことは彼女に与えられた試練であった。喘息を患ったことや屋敷近くに住む大岩家の親戚である佐々木家に養子になったこと。静養の為に大岩家に世話になったことすべては最初からマーニーと出会う為に定められていたことである。
与えられた時間の中でマーニーは杏奈との再開を果たし、夏のひと時を一緒に過ごすことで、一緒に居られなくなってしまった無念を言葉ではなく愛情で伝え、杏奈への想いを伝えて行く。そしてそれを知った杏奈は心の傷を癒して行く。
二人の出会いは双方の傷を癒し、その傷が癒された時、誰よりも深い愛情を得るようになる。
主題歌(エンディングに使用)はプリシラ・アーン(PRISCILLA AHN)の『Fine On The Outside』という曲でこの映画の為に新しく書き下ろされた。
この曲はスーッとどこかの世界に引き込まれて行くような広がり感と包み込まれるような温かみがあり、優しい気持ちにさせてくれる。