約1年半越しで手に入れましたFinePix E510をサクッと見て行きます。
上位機E550との比較は PC Watch Impress で比較されていますのでそちらでご確認頂き、こちらでは個人的な見解を記して行きたいと思います。
見た目のE550との違いは横幅が少々狭くレンズの口径や正面実像ファインダーの形状の違い程度。まったくの瓜二つと云うほど似ているわけではありませんが、街中でのパッと見は違いを知っている人間でなければ識別できないほど似たデザインに纏め上げられています。
E550の下位モデルという位置付けながら同じEシリーズであってもCCDパネルの大きさの違いからくるレンズ口径の大きさの違いなどから、その形状をまったく同じにするのは難しかったのではないかと考えられます。
当然、E550のボディの大きさのままでE510やE500を作ることは可能だったでしょうが、レンズ口径の違いによるボディ形状の違いが生じ、成型する金型に共通性が無くなるのであれば、デザインを似せて専用の金型を作り、CCDパネルとレンズのコンパクトさを活かして多少でも小型化させた方が携帯性や取りまわしのしやすさなどの利便性が向上すると判断されて専用デザインになったのではないかと思います。
加えて、下位モデルながら専用の金型を設計製造してコストが掛けられているという自負もアピールできる為、販売戦略のひとつとしても考えられたのではないかと思います。
まぁ、これはあくまでも個人的な推測でしかありませんが。
正面の画像を見てメッキパーツの擦り傷も少なく良い状態を保っていることが確認できたかと思いますが、一点残念だったのは側面の当て傷でありました。
これが無ければ新古品並の個体だったのですが、使用されていた個体で傷がこれだけなのですから、大事に使われていたのだと判断が付くことと思います。インターフェイスのラバーキャップも焼けが少なく綺麗な状態ですしね。
このモデルでちょっと気になるのが、画像で見れます側面にあるスピーカーです。両手でカメラを構えるとスピーカーを塞いでしまうこと。またセルフタイマーのブザー音も聞き取り難くなるので、側面よりは正面に装備させた方が良いのでは?と思いました。
上部はレリーズボタンの形状が違う程度で、殆んどE550と同じデザインになっています。
単三電池が収められるようグリップ部が大型化されており、ホールド性が増しています。更にその恩恵にプラスしてラバーも貼られていますからホールド性はピカイチです。しっかりとカメラをホールドできますから手ブレ防止にも貢献。このカメラの最大の特徴であり、昨今の薄型カメラよりもカメラらしく、当方が好む部分でもあります。
やはりカメラはこのぐらい大きい方が良いですね。
モードダイヤルにはフルオートやシーンポジションに加えてプログラムAE、シャッタースピード優先AE、絞り優先AE、マニュアル撮影と備わり、当時フジでは廉価版カメラに採用されていた正方CCDパネルを搭載しながらも、上位機E550と同じ露出制御が装備されているのには驚かされます。
元々、Eシリーズの最上位機のE550はF810の兄弟機であり、撮影に関しての機能は豊富。一部機能を削減されながらもその内容を下位モデルのE510,E500に継承させたのは立派だと思います。
底面はご覧の通り、傷がまったくありません。前オーナー様は余程大事に使われていたようですね。
Eシリーズはフジ機では珍しく電池蓋にロックが備わります。このロック機構は凹型の中に備わり、尚且つ丸凸型の突起が成型されている為、カメラを手にした親指でロックを押しながら電池蓋をスライドさせて開閉するのが容易に作られています。
このロック機構は扱い易いので、他のモデルでも採用して欲しかったですね。
背面はカメラ本体の形状が違いながらも操作ボタン類はE550と同じになっています。
当方は実像ファインダーをまったく使用しないので、左上のその部分が余分と感じてしまいます。
それと効き目が右目の人は実像ファインダーを覗くと違和感があるほどカメラが右寄りになりますよね。カメラを構えたその姿を想像すると「なんかちょっと不格好だなぁ」と思ってしまいました。
無理に装備する必要があったのかと考えてしまいますね。
まぁ、この世代のフジ機はフィルムカメラの名残りがまだあって、どのモデルも実像ファインダーが標準装備でしたから、当然のようにE510にも装備されたんだと思います。
Eシリーズのデザインはカメラらしいカメラですしね。
ディスプレイの保護パネルは強化ガラスを採用。この辺りもEシリーズならではの装備です。
保護ガラスには前オーナー様によって一応保護フィルムが貼られていましたが、サイズが小さく液晶の大きさ分のみ。この手のタイプは汎用サイズを購入して保護ガラスに合わせてカットして貼り付けた方が良いです。
但し、前途の通りで前オーナー様の気遣いから保護フィルムの貼られていない部分でも目立つ線傷は一切ありませんでした。本当に大事に使われていたんですね。
Eシリーズは操作性が抜群に良かったF710,F810ほどの使い易さはありませんが、露出補正だけはディスプレイ脇にダイレクトボタンが設けられてAEモード時の補正がしやすくなっています。撮影時にこのボタンを押しながら方向キーの左右を操作することで容易に露出補正ができるので非常に便利です。
ディスプレイを見ると左上にはAEモードを表す赤い文字に加えてその右横には測光方式を示すマークも表示されています。E550に備わっていたアベレージ測光は省かれていますが、マルチパターン測光とスポット測光の二つがこのE510には備わり、GUIから選択できるようになっています。
また、下位モデルでは省かれてしまう露出値の表示も左下にきちんと備わっています。
そういえば、500万画素クラスのフジ機でハニカムCCD搭載機と正方CCD搭載機両方合わせてみても、測光方式が選べるのはS5200とこのE510だけしかなかったのではないかと記憶しています。これだけでも貴重なカメラに感じますね。
操作系はE550とまったく同じ。[MENU/OK]と[BACK]ボタンの文字は焼き付け塗装っぽい感じのものなので、余程使用頻度が高くない限りは文字消えを起こすことはないと思います。
またズームボタンや方向キーの表記はプリントではなく金型成型されているので文字消えなど縁の無いもの。コストが掛かっていることが窺える部分です。
その方向キーの左右にストロボモードとマクロモードを備えるのはフジ機ではお馴染みの機能。そのマクロモードは通常のマクロ撮影に加えてスーパーマクロも備え、ワイド端のみではありますが2.6cmまで近寄ることが可能です。
側面から回り込んだラバーグリップもホールド性を高めています。使用による皮脂のシミが少々残念です。
電源を投入してストロボをポップアップした画。
レンズは35mm換算で28mm~91mm相当。開放値はF2.9~F5.5となっています。ワイド端はF2.9とまずまずの明るさですが、テレ端91mmでF5.5という開放値は暗く少々残念なところ。ハニカムCCDと違って当時の正方CCDでは高感度撮影は望めないので、日陰や曇天でのテレ側の撮影では手ブレに注意する必要がありそうです。
因みにピントはGUIの設定から方向キーを使用してのマニュアルフォーカスが可能。マクロ撮影で重宝しそうです。
ストロボは当方が好むプッシュボタンによる手動ポップアップ式。メニュー画面からストロボモードをオンにしてレリーズボタン半押しで自動ポップアップさせる手間が無く、専用ボタン一つで直ぐに発光可能となるので非常に便利です。日中シンクロなど強制発光させたい時などやはり手動ポップアップ式の方が扱い易いと思います。
但し、単三電池仕様なのでフルチャージに時間が掛かるのが難点。乾電池は応急用にしてニッケル水素電池などのリチャージブルバッテリーを常用するのが賢明かと思います。
それと発光時の光量調整が可能。流石Eシリーズですね。
最後におまけ画像。歴代Eシリーズ勢揃いです。
E510を手にできたことで日本では未発売であったE900を含め、歴代Eシリーズをすべて手にすることができました。
この中でのお気に入りはやはりネオ一眼フラッグシップ機S9000と同じ第五世代ハニカムCCD 900万画素を搭載したE900でしょう。
日本では未発売であった為、馴染みはありませんが、パネルの世代が新しい分、状況によって僅かに緑被りのあった第四世代と違ってカラーバランスの精度が向上し、同時に発色も素直に。上位機のパネルを搭載したことで解像度から階調表現と、数段E550よりE900の方が写りが良くなっています。
最後に
コストダウンの為に廉価モデルに採用される正方CCDパネルを搭載し、また一部機能を削減させながらも『このカメラはEシリーズのカメラなのだ』と上位モデルだということを彷彿させる内容に仕上げてあるのには、素直に「よくできているな」と感じました。
機能が削減されながらも撮影を楽しむといった部分はきちんと残されていますから、CCDパネルに拘らずビギナーモデルよりも多少凝った撮影をしたいと思うユーザーには、なかなか面白いモデルだったのではないかと思います。
E510に関して他よりも多彩なAEモードと使い勝手、またワイドコンバージョンレンズを装着した際の22㎜相当の超広角域と、正直、正方CCDに興味の無い当方であっても十分魅力のあるカメラだなと思いました。
ただ、当時の実勢価格は同クラスのカメラよりも高く、この内容が認知されずに販売戦力に繋がらなかったのは非常に残念であります。